新年度を迎えるにあたって 理事長挨拶
新年度を迎えて
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、介護保険事業にも大きな影響を与えた2年間でした。新規感染者数は減少していますが、感染に対する緊張感は持続しており、多くの施設が感染防止対策の徹底を図ることによって、利用者やご家族の皆様にご不便をおかけしていることをお詫びいたします。
3回目となるブースター接種は、医療従事者から開始され、徐々に高齢者の接種率も増加してきました。しかし、三大都市圏では病床使用率が50%を超える医療機関が大半を占め、オミクロン株やステルスオミクロンによる新規感染者数の動向は今後も予断を許さない状況が続いています。
現在の焦点は、感染防止対策と社会経済活動との両立をいかに実現するかへと移行してきましたが、原油価格の高騰による諸物価の値上がりが社会経済の回復に水を差し始めています。物価の値上りは、我々の事業においても経営状況の悪化に直結し、苦しい状況が続くことが予想されます。
社会経済に活力を生み出し、社会保障を支えるためには生産年齢人口の存在が重要ですが、1995年をピークに減少に転じています。生産年齢人口の減少は、労働力投入の低下となり、生産性の向上を停滞させ、経済成長の低減となることが懸念されます。生産年齢人口の減少は、介護保険事業にも直接的な影響を与えます。介護保険事業の需要は拡大を続ける一方、介護職員の慢性的な人材不足は深刻な課題です。生産年齢人口の減少は労働力投入の低下を生み出すことから、さらに深刻な状況となることが懸念されます。
これらの社会的背景から我々介護事業者にとりましては、物価の値上がり、介護職員の人材不足は避けて通ることのできない喫緊の問題といえます。
介護職員は、2040年には約70万人が不足すると推計されており、このため、介護職員の労働条件、職場環境の改善など様々な対策が講じられています。具体的には、以下の2点があります。
第1に、外国人介護職員の受入れです。EPA、技能実習生、特定技能「介護」など様々な在留資格で受入れを進めてきました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、外国人の新規入国は原則停止されました。3月からは、新規入国の制限は緩和されましたが、入国時期に関してはまだまだ不透明な状況といえます。
第2に、介護職員の収入を3%程度引き上げることを目的に、処遇改善支援補助金支給の実施が決定しました。しかし、9月までの加算の内示はありましたが、10月以降の措置については具体的に示されていません。10月以降、今までの処遇改善加算に加えて処遇改善支援補助金がどのように介護報酬に反映されるかということも大きな課題です。
これらの大きな課題がいくつも表面化している介護保険事業ですが、今後も高齢者の皆様が安心して過ごしていただくために、我々は一層の努力をなす所存でございます。これまでにも増してのご支援とご理解を賜りますようお願いしてご挨拶とさせていただきます。
神戸市老人福祉施設連盟
理事長 出上俊一